タイトル画像:国民健康保険の免除・手続き

国民健康保険 免除と申請

 失業して無職になれば、国民年金や国民健康保険(国保)の支払いは大変ですよね。国民健康保険の免除は、国の法律で決められている減額(軽減)制度と、各市区町村の条例で定められた減免制度(申請が必要です)があります。減免と減額は異なる制度なので、このページを読むときは混同しないように注意してください。国民健康保険制度は各市区町村ごとに運営されているので、減免・免除の具体的な基準はかなり異なりますので、支払いが厳しいと感じたら、早めに自治体に相談してみることをお勧めします(基本的に、減免の申請日以降に納期限が到来する保険料が、減免・免除の対象となります)。
 また、国民健康保険には支払いを先延ばしにする徴収猶予・分割納付、もありますので、上手に利用しましょう。

国民健康保険とは

 国民健康保険は、市区町村ごとに運営され、保険料も異なっています。介護保険料を含んだ1人当たりの保険料は、最高の北海道羅臼町で約11万7千円、最低の鹿児島県十島村で約1万9千円、平均では約8万円であり、自治体間の格差は、最高6.1倍もあります(2001年度)。2003年には、滞納世帯が2割りにも達していて、このため滞納を見込んで保険料を高く設定している市町村も多いそうです。同一都道府県内でもかなり保険料は異なる場合があります。たとえば、大阪府内の各市町村の保険料を、ある世帯を例にして計算したところ、同じ府内でも約2倍も異なっていました。→大阪府の各自治体の計算例
 引っ越しをするなら、20万円、30万円の得になるかもしれませんので、近隣の市町村の国保料も事前に調べてみましょう。

負担の大きい国保制度
 自治体間の格差の他に、他の公的医療保険制度との格差もあり、政府管掌健康保険や組合管掌健康保険と比べると、国保は収入の少ない人(無職、年金生活者)が過半数を占めるのに、1人当たりの診療費は高くなっています。その結果、収入のある人の本人負担が特に大きい状況であり、年収200万円の低収入でも他の公的健保に比べると2倍程度も保険料が多くなっています。→他の公的健康保険との格差
 少しくらい給料が安かったとしても、社会保険に加入できる会社に入ったほうが、お得なことが多いようです。

国民健康保険料の計算方法

保険料は世帯ごとに前年所得で計算される
 国民健康保険料は、前年度の所得等によって計算されます。そのため、失業等により収入が途絶えると、収入がないのに高額な保険料を支払うことになりますが、翌年度の保険料は少なくなります。
 国民健康保険料は、医療分保険料、後期高齢者支援金、介護分保険料(40歳以上〜65歳未満)の合計額で、健康保険加入者の人数と所得金額や固定資産税額をもとに世帯単位で計算されます。→国民健康保険料(税)の計算方法 年金収入、給与収入、大阪市などの例で

国民健康保険料の上限
 国民健康保険料の年間の限度額(最高額)は、法律により定められており、介護納付金の限度額が10万円、基礎賦課額の限度額が47万円、後期高齢者支援金の限度額が12万円となっており、合わせて69万円が限度となっています。なお、市町村によっては、限度額より上限を低く設定しているところもありますが、財政が厳しい市町村が多いので、限度額いっぱいに設定している市町村が多くなっています。
 ちなにみ、比較的高い保険料となっている市町村、たとえば、大阪府の守口市では、4人世帯では、年収497万円(所得344万円)で、医療分上限の47万円に達します(平成20年度)。→国保の上限について詳細

減免は申請が必要

 国民健康保険の減免は市区町村ごとに条例で定められた制度です。減免の適用は、天災などの災害を受けた場合あるいは貧困により公私の扶助を受けている場合です(注1)が、市区町村ごとに運用されているので具体的な基準は異なっています。
 天災などの災害とは、地震、風水害、火災その他これらに類する災害、病気、失業、その他特別な事情により、財産に甚大な損害を受けたり、収入が著しく減少した場合としていることが多いようです。公私の扶助を受けているような状態とは、生活保護と同水準の収入・資産しかないようなことです。
 減免を受けるには申請することが必要です。なお、所有資産、収入、支出、生活などの状況の申告書の提出を求められ、提出内容を調査される場合もあり(→生活状況申告書の例)、申請時に必要な書類として、給与明細書、預貯金の通帳、家賃や公共料金の領収書などの収支を示すものの持参が求められる場合もあります。また、東京都足立区のように、事前に電話で相談して下さいとホームページに書いてある市区町村もありますので、申請に行く前に電話で相談し、必要書類等を確認したほうがよいでしょう
 なお、減免制度は、市町村によって定められるものなので、減免制度がないことも考えられます(注2)

 減免制度を積極的に案内しない市町村もあります)ので、市町村に相談する前に、市町村のホームページを見て、国民健康保険条例に減免条項があるのか、国民健康保険減免要綱・減免規則があるのか確認しておくと良いでしょう。ただ、条例や要綱をホームページで公開していない市町村も多数あります。(注3)

納期限の前までに減免の申請をしましょう
 多くの市町村では、「減免を受けようとする国民健康保険料(税)の納期限の7日前まで、あるいは納期限までに必要書類を添付して申請しなければならない」と定められており、申請した日以後に納期限が到来する保険料が減免されます。つまり、さかのぼって減免の申請はできませんので、既に納期限が過ぎ、支払っていない保険料や既に支払ってしまった保険料は減免されません。ただし、市町村によっては、特別な事情があると自治体の長が認めた場合、あるいは納期限後に申請理由が生じ速やかに申請した場合には、さかのぼって減免されることもあります。
 なお、納期限(納めなければならない期間の最終日)は、納付書に書かれています。申請の期限については市町村によって異なりますので、必ず確認しましょう。→減免の申請の期限の例

注1)
 地方税法第717条(水利地益税等の減免)
 地方団体の長は、天災その他特別の事情がある場合において水利地益税等の減免を必要とすると認める者、貧因に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該地方団体の条例の定めるところにより、当該水利地益税等を減免することができる。但し、特別徴収義務者については、この限りでない。
注2)
 国民健康保険法の(保険料の減免等)第77条 「保険者は、条例又は規約の定めるところにより、特別の理由がある者に対し、保険料を減免し、又はその徴収を猶予することができる。」とあるので、減免・猶予をするかどうかは市町村に任せられている。
注3)
 国の制度である減額制度では、保険基盤安定制度により減額分は補てんされる。しかし、減免制度では補てんが市区町村に対して行われないので、市区町村の負担となってしまう。

国民健康保険の減免の基準

 減免基準は、市区町村ごとに定められ、その減免事由や基準、一部減免や全額免除となる場合まで様々です(注1)。減免基準が、減免要綱・規則により詳しく定められていて、ホームページで公開している市町村もある一方で、減免について市町村のホームページには、全く書かれていなかったり、「火災等やむを得ない事情により」というように一言しか書かれていない市町村も多数あります(注2)。市町村の窓口で減免について、きちんと説明してもらえない場合は、減免取扱規定や要綱があるか確認し、見せてもらいましょう。

 多数の市区町村の減免基準を見たところ、減免の事由としては、次の4項目に大別できるようです。下表には多くの事由を記載していますが、市町村によって異なります。
生活が困窮している場合 ・事業や業務の休廃止等による著しい収入減少
・干ばつ,冷害,凍霜害等による農作物の不作その他これに類する理由による著しい収入減少
・失業、退職等により収入が著しい収入減少
・疾病や負傷による著しく収入が減少し、医療費が増大
・納税義務者の死亡、障害者となり著しい収入減少
・1世帯あたり3人以上の被保険者がいる世帯で基準生活費に対する収入率が1.2倍未満(狛江市)

添付書類の例:給与証明書、収入・無収入証明書、医師の診断書など。
収入については、例えば、申請前3か月分
 生活困窮を事由とする場合には、「利用し得る資産・能力その他あらゆるものの活用を図ったにもかかわらず生活が困窮」とする条件が付される市町村もあり、その場合には、所有資産、収入、生活状況などを記入し、その内容について調査されることもあるようです。
公私の扶助を受けている場合 「公の扶助」とは、生活保護、就学援助などです。「私的な扶助」については、社会事業団体からの扶助は、多くの市町村で例示されています。例示されていなくても、私的扶助とされるものに、生計が別の親族あるいは第三者からの扶助を受けている場合があります。→減免要綱や議会答弁による公私の扶助についての記述
生活保護 生活保護を受けることになった場合
災害を被った場合 震災、火災、風水害、盗難、横領これらに類する災害によって財産に大きな損害を受けた場合
必要書類の例:消防署、警察による証明書など

 所得の減少を理由とする場合には、前年よりも年収見込みが2割減でも減免となる可能性のある基準が高めの市町村もあります。

 一般的に生活困窮とは、生活保護基準程度のことを指します。生活保護受給世帯では、年金、健康保険料、税金などは免除されますので、生活保護を受けていない世帯にとっては生活保護基準の1.4倍〜1.2倍程度の収入で生活保護と同等の生活水準になるようです。
 生活保護基準は、所在地別に厚生労働大臣が定めます。たとえば、東京都練馬区(練馬区の生活保護級地区分は、1級地-1)に在住し、単身世帯で、20歳〜40歳の場合の生活保護月額(平成19年)は、次ぎのようになると思います。この例では、月額137,100円以内(年額約165万円以内)となり、練馬区の国保減免基準は、約165万円の1.15倍なので、収入約189万円となります。

練馬区の生活保護月額 単身世帯
(平成19年)
第1類(主に個人として必要なお金) 39,970円
第2類(世帯として必要なお金) 43,430円
住宅扶助:特別基準(単身世帯) 53,700円
以内
合計 137,100円
以内

世帯別最低生活費算出事例(平成19年)単位:円(広島市HPより)
世帯区分 生活扶助 住宅扶助
限度額
合計
標準3人世帯(夫33歳、妻29歳、子4歳) 159,870 55,000 214,870
高齢者単身世帯(71歳) 73,829 42,000 115,829
高齢者夫婦世帯(夫72歳、妻67歳) 113,102 55,000 168,102
母子世帯(母30歳、子9歳、子4歳) 175,690 55,000 233,450
教育扶助含む

生活扶助基準の例(平成16年度)(厚生労働省HPより)
世帯区分 東京都区部等 地方郡部等
標準3人世帯(33歳、29歳、4歳) 162,170円 125,690円
高齢者単身世帯(68歳) 80,820円 62,640円
高齢者夫婦世帯(68歳、65歳) 121,940円 94,500円
母子世帯(30歳、9歳、3歳) 158,650円 122,960円

→全国の主な自治体の減免基準について:東京都23区横浜市、大阪市、名古屋市、札幌市、神戸市、京都市、福岡市、川崎市など
注1)
地方税第717条を受けて、市町村ごとに具体的に基準を定めているため。
 地方税法より (水利地益税等の減免)
第717条 地方団体の長は、天災その他特別の事情がある場合において水利地益税等の減免を必要とすると認める者、貧因に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該地方団体の条例の定めるところにより、当該水利地益税等を減免することができる。但し、特別徴収義務者については、この限りでない。
注2)
東京都内の島しょ部を除く31市町のホームページ(条例・要綱を除く)を閲覧し、減免についてどのように書かれているか調べたところ、12市町で全く書かれておらず、「災害など」と一言で書かれている市町が10あり、9市町が「災害や失業」など複数の理由をあげていた。しかし、収入減少率や資産の被害率など具体的な数字を示している市町はひとつもなかった。(平成21年5月閲覧による)

健康保険料の減額(軽減)

 減額(軽減)制度は、前年の所得が一定額以下の世帯の場合に、均等割と平等割が減額される全国一律の制度(注1)です。減額制度は、法定軽減や法定免除とも呼ばれています。減額の申請は、基本的には必要ありませんが、前年の所得を申告している必要があります。減額は、市町村が前年の所得に基づいて自動的に行うため、所得がなくても所得の申告をしていない場合には減額制度は適用されないのです

所得の申告について
 国民健康保険に加入されている世帯の世帯主は、世帯の被保険者の保険料の算定のために前年の収入が無収入の人や、収入があっても非課税所得(遺族年金、障害年金等)となるため税の申告が免除される人についても申告をする必要があります。税務署への確定申告、あるいは市区町村への住民税の申告、または「国民健康保険料に関する申告書(簡易申告書)」を提出してください(ただし、は給与及び公的年金等の支払報告書が市区町村に送付されている人は、提出不要です)

 減額割合は、7割〜2割(市町村によって異なります)となっており、医療分と介護分に対し、均等割額と平等割額が、7割〜2割軽減されます。減額制度では、軽減はされますが、全額免除にはなりません。
 減額は3区分に分かれており、@7割〜5割減額、A5割〜3割減額、B2割減額(2割減額制度のない市町村もあります)となっています。
 なお、2割減額は申請する必要がありましたが、平成20年度以降、申請する必要がない市町村が増えています(市町村が全ての人の前年所得により2割減額の適否を判断する)。

重要
 減額判定の所得は、世帯主(擬制世帯主を含む)と国民健康保険加入者である世帯員の所得が合算されます。擬制世帯主とは、国民健康保険に加入していない住民票上の世帯主のことです(地方税法第703条の4)。たとえば、世帯主の父親と同居している場合は、父親がサラリーマンで国民健康保険に入っていなくても、父親の所得も、減額の判定に使われます。

@7割〜5割の軽減
 前年中の総所得金額及び山林所得金額等の合算額が基礎控除額(33万円以下)の世帯
つまり、

 世帯の所得の合計額≦33万円

 軽減割合は、地方税法施行令第56条の89第2項により、市町村により異なり、7割〜5割となっています。

A5割〜3割の軽減
 総所得金額等が、基礎控除額に納税義務者を除く被保険者数に地方税法施行令第56条の89第1項で定める額(24万5千円)を乗じて得た金額を合算した額以下の世帯
つまり、

 世帯の所得の合計額≦33万円+24万5千円×世帯主を除く被保険者数

 軽減割合は、地方税法施行令第56条の89第2項により、市町村により異なり、5割〜3割となっています。

B2割軽減
 (2割軽減制度のない市町村もあります)
 総所得金額等が、基礎控除額に被保険者数に地方税法施行令第56条の89第4項で定める額(35万円)を乗じて得た金額を合算した額以下の世帯
つまり、

 世帯の所得の合計額≦33万円+35万円×世帯主を含む被保険者数

 軽減割合は、地方税法施行令第56条の89第5項2により定められています。

●まとめると、
 世帯の被保険者の所得合計額が、

・「33万円以下」の場合 → 下表A欄
・「33万円を超え、33万円+24万5千円×世帯主を除く被保険者数以下」の場合 → 下表B欄
・「33万円を超え、33万円+35万円×被保険者数以下」の場合 → 下表C欄

各市町村の応益割合 A B C
45%以上55%未満の市町村 7割減額 5割減額 2割減額
35%未満の市町村 5割減額 3割減額 なし
上記以外の市町村 6割減額 4割減額 なし
応益割合とは、(均等割+平等割)の占める割合で、各市町村で異なります。

●たとえば、無職で前年の収入がない単身世帯で、東京都区部に在住、40歳以上65歳未満の方の場合では、7割減額になります。東京都区部では、平等割がないので、均等割が7割減額となります。なお、所得割は収入がないので当然ゼロ。また東京都区部では資産割もないので、資産割もゼロです。よって、保険料は、14,400円となります。
東京都区部 平成21年度
均等割 7割減額
医療分 27,600円 8,280円
支援金分 9,600円 2,880円
介護分 11,100円 3,300円
合計 48,300円 14,400円

注1(国民健康保険税の減額) 地方税法第703条の5

国保加入が遅れると

 日本では、それぞれ何かの医療保険に加入する制度になっています。そのため、社会保険などをやめた時に他の社会保険などに入らなければ、住所のある市町村で国民健康保険の加入者となります。これに伴い、国保税も社会保険をやめたときまでさかのぼり請求となります。

徴収猶予 分割納付

 やむを得ない事情によって、どうしても保険税を納めることができないときは、支払いの回数を増やす分割納付や、支払いを延ばす徴収猶予(延納)もありますので、市町村に相談しましょう。

滞納すると

 1年以内の滞納で保険証の有効期間内なら、保険証が使えます。でも、滞納が続くと、市町村は、数週間から数ヶ月のみ有効の短期保険証を発行します。

 1年を超えて滞納すると、保険証ではなくて、いろいろと面倒な被保険者資格証明書になります。被保険者資格証明書では、医療機関の窓口で医療費をまず全額払います。そして、手続きをすれば、市町村から、保険給付分の7割りが払い戻されます。

 1年半を超えて滞納すると、払い戻し分と滞納額を相殺される場合や保険給付が一時差し止められてしまいます。

 延滞すれば、督促手数料や年14.6%の延滞金がかかりますので、どうせ払うのなら延滞しないほうがよいでしょう。給与などの差し押さえ処分になった世帯は、2002年度には51,512世帯もあります。


関連サイト:国民年金の免除